症状と治療

うつ病

どんな症状?

「なかなか寝付けず、すぐに目がさめる。」「疲れや体のだるさが取れない。」「気分が沈んで何をしても楽しくない。」そのような症状が長く続いているならば、うつ病かもしれません。

うつ病のポイントとなる症状は「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」です。

ここで、抑うつ気分というのは、憂うつで気が滅入ったり落ち込んだり気分が沈んだりすることで、悲しい感じや虚しい感じを伴ったり、ひとりでに涙が流れたりするような症状です。興味や喜びの消失というのは、好きな趣味にも興味がなくなったり楽しめなくなり、ニュースなどにも関心が持てなくなったりすることです。

誰でもゆううつな気分を感じたり、落ち込むことは日常経験しますが、その度合いが強くなって簡単には消えなくなるのです。何事もおっくうで意欲・気力が減退したり、集中力が低下し決断できなくなります。自分には価値がないと責めて、時には妄想的ともいえる罪責感を訴えることがあります。繰り返し死について考えたり(希死念慮)、実際に死のうとしてしまう(自殺企図)ことが起こります。

身体症状を伴うことも多く、睡眠障害(寝付けない、途中や早朝に目がさめる、など)や食欲の低下をきたすこともよくあります。また、全身がだるい疲れやすいと感じたり、ときには(身体に異常がないにもかかわらず)頭痛や腰痛などの痛みに悩まされることもあります。うつ病の症状には日内変動があり、たいてい朝は調子が悪く夕方には楽になります。

これらの主だった特徴が一定の強さをもって一定期間しぶとく持続するのがうつ病の症状です。

みわける必要がある病気

うつ状態は身体疾患や薬物の影響で生じることもあります。体の病気が原因で抑うつ症状が生じることもあれば、身体疾患とうつ病が重複併存している場合もあり得ます。うつ状態は身体疾患の治療意欲を低下させたり、症状を悪化、長期化させる要因にもなります。

脳血管障害やパーキンソン病などの中枢神経疾患、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、悪性腫瘍(がん)などは特有の身体症状のほかにうつ状態をきたすことがあります。身体疾患の可能性が疑われるときはまず、これらの疾患のチェックを行う必要があります。身体疾患ならば、精神症状の治療の前に身体疾患の治療をすすめる必要がありますし、それによって精神症状の改善が図れることが多いからです。

老年期のうつ病との鑑別が問題になるのは認知症です。うつ状態が初期の症状(前駆症状)として現れることがあります。アルツハイマー病にみられるうつ状態は、うつ気分、興味の喪失、不安が目立ち、うつ病と共通点が多いため鑑別は容易ではありません。逆に老年期うつ病では記憶障害など認知機能の低下が見られることがあり、認知症と間違われることがあります。これはいわば治せる認知症です。

特にうつ病との鑑別が重要な疾患として、双極性障害、いわゆる「躁うつ病」があります。なぜなら、双極性障害のうつ状態は、うつ病と見分けるのが難しく、しかも治療の方法が全く違ってくるからです。双極性障害は、気分が高揚し万能感に満たされ活動性が増し多弁になったり浪費が目立つようになる躁病相と、うつ状態とが交替で繰り返され、その合間には症状のない時期があるという病像を示す疾患です。

また、統合失調症というこころの病気も、気分の落ち込みや意欲低下、強い不安などが初期に現れる症状である事が多く、うつ病のようにみえる事があります。

うつ状態には多様な原因があり得えますし、それぞれに対処法、治療法が異なります。みわけるのは難しいこともあり、安易に判断しないで信頼できる医療機関で相談することが大切です。

うつ病は性格や年齢にかかわらず、誰でもなりうる病気です。最近は子どものうつ病も少なくない事が知られてきました。

うつ病にかかったら:治療と支援

うつ病は放置すると、その人を取り巻く環境も悪化し、悪循環におちいって取り返しのつかないことになる事があります。症状が悪化する前に早く見つけて早く治療に取りかかる事が大切です。

うつ病に罹患した本人は、自分が病気であることを否定したり、人に相談するのを拒むことがあります。周囲にいる人は本人を説得して医療機関に連れていく必要があるかもしれません。

診療所や病院の医師は、まず本人や家族の話を聞いて、症状とその経過、背景にある環境とストレス因を把握します。病的状態を評価するための情報整理を行うのです。診断に至れば、治療プランを考えるのですが、年齢、症状の重さ、その人を取り巻く環境などに応じて、医師が一人一人に合わせた治療法を提案し、話し合って決めていきます。治療法としては、薬による治療、精神療法、その他があります。また、急性期、回復期、再発防止期という治療経過によって治療法を変えていきます。ストレス因を軽減するための環境調整も欠かせません。症状の重さによって、すなわち軽度のうつ病と中等度・重度のうつ病では治療の方法が異なってきます。

重度のうつ病には十分な休息と薬物療法が欠かせませんが、軽症のうつ病には必ずしもそれは当てはまりません。軽度のうつ病には薬物療法よりも精神療法を主におこない、休息だけでなく適度な運動が効果的なこともあります。

薬物療法について

抗うつ薬は機能不全におちいってしまった脳の神経伝達のバランスを調整します。現在よく使用されるのは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)と呼ばれるタイプの薬です。これらは従来主に使用されていた三環系抗うつ薬で出現しやすかった副作用、すなわち口渇、便秘、排尿障害、眠気や鎮静、心毒性などが出にくい薬として開発され、服用を続けることがしやすくなっています。

しかし副作用がまったくでないわけではありません。特にSSRIでは飲み始めの頃に嘔気や下痢などの消化器症状が出ることがありますし、SNRIでは排尿障害、NaSSAでは眠けが強く出てしまうこともあります。SSRIは児童、未成年に使用した時、まれに強い不安焦燥、易刺激性や衝動性が高まる事があるので慎重に使います。効果がはっきり出るまでは時間がかかりますので、副作用にも注意して、少量からゆっくり増量していく必要があります。再発を防ぐためにも、症状が取れて改善が見られたからといってすぐに止めずに、さらにしばらくは服用を継続し、安定状態が続くのを見届けてから減量や中止に踏み切ります。中止終了する際にも、徐々に1段ずつ階段を降りるように減量していかなければなりません。

中等度以上の症状であって、抗うつ薬単剤では十分な効果が得られない場合、効果を増強するために気分安定薬や抗精神病薬を併用することもあります。

精神療法

精神療法は医師と患者さんが会話をしながらストレスの原因や困っていることへの対応策を考え、考え方や行動パターンを修正して、心理社会的な不調を改善する治療法です。精神療法の中でも、うつ病に効果があるという科学的証拠が蓄積されているのが認知行動療法です。実際、重度のうつ病を除けば、薬物療法と同程度かそれ以上に効果があるとされ、再発予防にも効果的であることが知られています。

人間の気分や行動は認知(物事の考え方や受け取り方)の影響を受けています。

認知のゆがみが気分に影響を与え、うつ病の発生や持続に影響を与えています。この認知のスタイルを検証し、修正する事で改善をはかろうとするのが認知行動療法です。

うつ病の人は現実とは異なる悲観的な認知のかたよりを持っています。自分の感情だけを根拠に、ネガティヴな決めつけをしてしまう。ネガティヴな事にだけ注意を向けてしまう。ささいな事から過度に一般化させてしまう。失敗や悪い事を拡大解釈して、良い事は過少評価する。関係ない事まで自分と関連付け自己非難する。完璧主義で「0か100か」という思考になっている。否定的な予測を立ててしまい、その通り否定的な結果を実現させてしまうなど、特徴的なものの見方や考え方のゆがみがあるのです。

実際には、特定の状況でわき起こってくる気分や偏った捉え方や判断(これを「自動思考」と言います)を発見し、その根拠が正しくないことを理解し、よりバランスの取れた適応的な考え方を促すというやり方で、患者が自らの認知の偏りを発見しながら修正していくプロセスを手助けするのです。

この認知行動療法の発展形として、マインドフルネス認知行動療法、アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)なども、うつ病治療に用いられるようになっています。いずれも認知の機能に注目し、「マインドフルネス」や「アクセプタンス」といって、あるがままの状態に集中することを重視します。マインドフルネスというのは、今この瞬間の自分の体験に注意を向け、評価にとらわれず、ただ現実をあるがままに観て受け入れることを意味します。アクセプタンスも同様の考え方で、自分に生じていることを回避することなく体験し、今ここで与えられているものを判断を介さず受け取るということです。

言葉で思考する人間はえてして言葉にとらわれてしまいがちです。言葉にとらわれ、様々な(今ありもしない)未来の不安に悩まされてしまいます。過去の嫌な出来事を繰り返し思い出して、それにしばられ続けていないでしょうか。「今、ここ」をしっかり感じることから、スタートするのです。

回復に向けて

うつ病からの回復にはいくつかのステップがあります。まず枯渇してしまったエネルギーをためていくために、十分な休息が必要です。つらい症状がなくなっていき回復が見えてきても、波はあるので焦らないようにする必要があります。生活リズムを整え、少しずつ運動や活動を続けてみて、多少のストレスにも動揺しないか確かめます。生活環境や職場環境を見直し、再発を防止して、安定した状態を保てるようにします。

うつ病で長期休業していた人が職場復帰を目指すとき、注意しておかないといけない事はたくさんあります。往々にして、早く復職したい、もう働かないといけない、という思いから復職を急ぎ、間もなく再発してしまう事は少なくありません。たとえ日常生活に支障がないほど回復していても、労務の負荷にも再発しない程度に回復しているとは限らないからです。復職支援プログラムなどを利用して、職務に復帰しても適応していける程度にまで調整することも必要です。怪我で休養せざるを得なくなったアスリートが、傷が治っても入念にリハビリを行うように、慎重に再発を防いで安定回復を目指しましょう。

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